北朝鮮拉致「救いに行くのがあたりまえ」が通じない日本/参加者の声

北朝鮮による拉致問題が膠着状態に入って久しい。安倍首相はG7(先進7カ国首脳会議)において「全ての首脳たちから理解と支持を得た」と外交成果を強調し、日朝首脳会談への意欲を示している。

しかし北朝鮮側はここに至って「(拉致は)荒唐無稽な詭弁であり、意地の悪い捏造」と主張する(5月27日/労働新聞)など、「解決済み」という見解からさらに後退している。

いったい拉致被害者が帰国できるのはいつなのか…? そのような中、民間団体「救う会」のメンバーは、毎月のように街頭署名活動を続けている。どのような考えで活動を続けるのか、一般参加者に聞いた。

北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会
会員・本山恵(もとやま・めぐみ)さんインタビュー
聞き手:フリーライター 菟乃元(うの・はじめ)

Q.救う会に入会する前は、北朝鮮拉致問題についての印象はいかがでしたか?

ニュースで見るだけだったので、遠い世界の出来事だと思っていました。知識がないものだから。

Q.そもそも、何年前に関わったのですかね?

結婚してからですから、7年くらい前ですね。

夫と結婚してから拉致を知るようになって、平野フミ子さん(拉致被害者家族)などと一緒に街頭に立つようになって身近に感じるようになりました。こんなに身近に(拉致の)被害に遭われた方がいるんだなと。

当時は毎月、平野フミ子さんが(熊本から)福岡に来られていました。

平野フミ子さん(増元るみ子さんの実姉)

参加するうちに、福岡県内でも被害に遭われた方がいると知って。糸島市、福岡市と北九州市もですね。こんな近所で北朝鮮による拉致犯罪が起こっていたというのが、凄い衝撃でした。

Q.救う会に参加するようになったきっかけは、先ほど言われたようにご主人ですか?

そうですね。結婚したので、主人がそういう活動をしているのであれば手伝おうと思って参加しました。

Q.実際に救う会の運動に参加する上で拉致事件の現状、例えば小泉訪朝から17年間誰も帰ってきていないという現状について思うところをお聞かせください。

普通、コミュニティ、地域の人、自分の知っている人、家族が連れられたら頭にくる…というより怖いし、助けに行くのが普通ですよね。それが「あたりまえ」だと思っている感覚が世間にない。

子どもが誘拐されたら親だったらいてもたってもいられないし、家族とか友達だったりしたら普通にびっくりするし、取り返すのが「あたりまえ」だと思うんですけど、この「あたりまえ」が伝わらない。

犯人が北朝鮮だというだけの話で。

Q.この「あたりまえ」の感覚が、こと拉致事件になった瞬間に伝わらないですよね。

そうですよね。訳のわからない理屈で話をすり替えますよね?

(街頭署名活動中に)絡んでくる人。「いまその話とは違うでしょう」と思うんですけど。

国民が拐われたんだから取り返そうよという話なのに、なぜか(強制連行などの)歴史問題を持ち出して、「…だから日本人が嫌われるのは仕方ないんだ。諦めろ」などとおかしなロジックで絡んで来る人がいて、「じゃあお前が行けよ」という話で。

そんなに言うんだったら、「あなたが横田めぐみさんの替わりに(北朝鮮へ)行ってこいよ」と思うんですけれども。

Q.政府や政治家に対して要望はありますか?

政治家は、選挙のときしか(拉致問題を)見ない人とかいますね。

選挙の時だけアピールしているなって人がいるなと。それどころか、公約に掲げもしない人が多い。福祉ばっかり。まあ、福祉も大事ですけれど。

Q.拉致被害者奪還の方法について。どういう方法が理想だと思いますか?

一番は世論ですね。

歴史問題とか政治問題にすり替えずに、「子どもが連れ去られたんだから取り返しましょうよ」ってみんなが思わないと、政治家も動きようがないので。日本の現状はそうですね。とにかく世論。

デモ隊の旗手を務める(国民大行進)

世論が政治家を動かし、国を動かさないと。憲法改正も出来ませんし、そもそも被害に遭われた日本人と家族も悲劇ですけど、北朝鮮の人民も気の毒だと思います。みんな不幸。独裁政権があるがために。

(北朝鮮の人民は)生まれたときからハードモードじゃないですか。生まれる国は選べませんからね。餓死するか逃げるか強制収容所かの三択ですよね。

あと、土台人(※)っていって、拉致に協力した人たちも酷いですが、脅されているんだろうなと思います。本国に親戚とかがいるから。日本人なのに北朝鮮に協力した人たちは、さらに酷いです。

※土台人…北朝鮮の諜報・情報機関の工作員が用いる用語の一つ。彼らが日本に潜入する際に対日工作活動の土台として利用する在日朝鮮人のある層を意味する。(Wikipedia)

Q.日本が拉致事件を解決することが、拉致被害者や家族の方々だけでなく、虐げられる北朝鮮の人民をも救うということですか?

そういうことですね。

Q.拉致被害者奪還の方法について、例えば外交で取り返すとかありますが…

それは(外務省が)散々やりましたよね。

話が通じる相手ならばいいですけど。外務省とか政府がやってるふりをしているのではないかと、最近疑わしく思ってきているんですよ。ポーズだけ「やってますよ」感を出しているのではないかと。国民が騒げば、「やってますよアピール」はされますけれど。

実際に、横田めぐみさんの映画一つ上映できず、反対されれば上映できず(※)。ちょっと意思が弱すぎるかなと。

※文科省は全ての小中学校へ拉致問題啓発アニメ『めぐみ』を上映するよう通達を出しているが、日教組などの反対で上映はわずかしか進んでいない。

Q.具体的な方法論についてはいかがですか?

具体的な方法は、直接取り返しに行くしかないと思いますよ。

Q.自衛隊ですか?

自衛隊プラス、在日米軍にも協力してもらって。

というか、本気で取り返しに行くぞというポーズをとらないと、ほんと馬鹿にしていますよね。あちらの方々は。

どうせヘッピリ腰でしょ? ミサイルで脅せば言うこと聞くんでしょ? っていうのがすごくあるので、ホントに本気だよと言わないと外交にならない。お芝居が大事だと思います。

外交って、「本当に返さないとあなたたちどうなるかわかりませんよ」と言わないと向こうも本気で受け取らない。外交は力だけだと思います。力と力。パワーバランスだけで成り立っていると思います。

本気を見せないといけないんです。

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(この記事は『選報日本』にも掲載されました)

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