私たちは、「北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会(救う会福岡)」の者です。
国家の一方的な暴力・許すべからざる人権侵害を受け、北朝鮮に連れ去られたまま今も帰国できない同胞を救うための活動に、皆様方とともに取り組んで行きたいと思い、こうして皆様方にお声掛けをしております。
昭和から時間が止まっている
桜の花咲くころを迎え、もうすぐ新しい年度を迎えようとしています。皆が入学や入社新しい年度、そして新しい御代への期待を胸に日々を過ごしている中、時の流れが止まっている場所があります。
平成どころか昭和から時の流れが止まっている同胞がいます。それは言うまでもありません、拉致の被害に遭われた方々とそのご家族の皆さんです。
こうしてこの場所に立つとき、私はいつも言いようのない悲しみと無力感、そして腹の底からこみあげる怒りを覚えます。何度私たちは同じことを言わねばならないのか、それも分かり切ったことを、です。
拉致は拉致した方が悪い、それは余りにも当たり前のことなのです。
だから拉致被害に遭われた方々は一刻も早く日本に帰って来なければならない。当たり前すぎるほど当たり前のことです。返さなければどうするか、取り返しに行く。これも、世界の誰もが認めることです。自国の国民を護らない国など存在しないはずです。
しかしながら、現在の日本はそうなっていないのです。このように言うと「今の憲法が」と思われるかも知れませんが、そうではありません。現在の憲法が禁止しているのは国際紛争を解決する手段としての武力行使です。拉致は国際紛争ではない、揉め事ではないのです。一方的に悪いことをされているだけなのです。
実力行使で拉致被害者を救え
だから国は解決に乗り出して良い。言っても聞かなければ実力行使に訴えて良いんです。
これは戦争ではない。正当防衛に当たる案件なのです。皆さん、先ずこのことをはっきりさせましょう。私たちは実力行使となど望んでいない。むしろ、平和の有りがたさを人一倍知る国民です。そんな私たちが、実力行使を行ったとすれば、それはさせた側に責任がある。私はそう思っていますし、世界も必ずそう思ってくれるはずです。
私は皆さんにお尋ねしたいのですが、もしアメリカが、自国民が900名近く他国に拉致されている可能性がある、返せと言っても、もう解決済みと言って返さないというような態度を他国から示されたとき、実力行使をしない可能性があるでしょうか。
今のアメリカ大統領ならば、国自体を滅ぼしに掛かるかもしれません。そして、国を滅ぼされたくないから、その国は拉致被害者をすぐに返すと思います。
他の国々にしても行動にそう大きな変わりは無い筈です。自国民の安全を守るということは、国家の第一義ですから。ところが日本のみが、実力行使を自らに禁じているがために、いつまでたっても直接的な行動がとれず、他国から見くびられ、拉致問題が今日まで長引いているのです。
拉致被害者救出は「自衛」
もう一度繰り返します、拉致問題は国際紛争ではない、他国によるテロ行為です。
自分たちが正しいと信じる思想の前には他者の生命を平気で踏みじれる、そのような心が拉致問題の根本にはあります。
あのテロ集団、オウム真理教の地下鉄サリン事件と全く同じなのです。皆さんはオウム真理教の信者が、一般市民を誘拐し、どこかの施設に幽閉していれば断固取り返せと言うと思います。
向こうが武器を持って威嚇するのであれば、警察が銃を発砲することも止む無しといわれると思います。このことをお考えいただけるのであれば、私が決して過激なことを言っているのではないことはお分かりいただけると思います。過激なことを行っているのは向こうの方なのです。
このような話をすると、「じゃ、お前が北朝鮮へ行け」とおっしゃる方がいます。私が行って、事態が少しでも変わるのであれば喜んで行きたい。私が北朝鮮に行けば、代わりに横田めぐみさんが帰ってくるのであれば、喜んでそうしたい。
北朝鮮は犯罪国家
私は半世紀以上、この素晴らしい歴史と伝統の国日本での人生を楽しんできた。一方、めぐみさんは少女のころからご家族とも切り離され、それから40年以上、未だ国民が飢えを感じるような貧しき国独裁国家で暮らしている。
どんなにか日本へ帰りたいでしょう。そして、ご家族の方はどれほどめぐみさんの帰国を待ち焦がれているでしょう。
もし、自分が北朝鮮へ行けば代わりに拉致被害に遭われた方が帰って来るというのであれば、拉致被害者883名分の志願者、今日にでも集まると思います。
しかし、それでは事態は変わらない。悲しいことですがそれが現実です。
何故でしょう。それは、拉致犯罪を犯したのが国家だからです。国家を裁くのは国家であり、事態を変えるのもまた国家なのです。
拉致問題の解決は、必ず国家間の交渉で行わなければならないのです。だから、私たちはこの署名活動を通して、国家に具体的な行動を呼びかけているのです。
繰り返します。拉致問題を解決するのは、日本国家なのです。他の国ではありません。
米朝首脳会談「決裂」の本質
世間では、米朝首脳会談が決裂したことが色々な角度から論評されています。しかしながら、この拉致問題に関しては、私たち日本国家が主体となり動かなければ問題は永久に解決しないのです。
交渉が決裂した日、アメリカのメディアは拉致問題を報じませんでした。当たり前です。アメリカの関心事は自国まで飛んでくる長距離間弾道ミサイル、そして核廃絶です。アメリカはアメリカの国民を護るために動いている、それだけです。だから、私たち日本も同胞を守るために動かなければならないのです。
拉致問題は、現代における最も悪質な人権問題であり、国家の存立に関わる主権独立の問題であり、人間としての道義の問題です。人として許せないというレベルの問題なのです。ですから、これに関してはチーム日本一丸となって取り組むべきものだと私は信じます。
拉致事件を否定してきた政治指導者
拉致問題とは何なのでしょうか。若い方々の中には拉致の事実すら知らない方がいらっしゃいます。ただ、このことに関して私達は若い方々を責めることは出来ません。それは、解決に向けて十分な努力をしてこなかった政府を含めた我々の責任だからです。
拉致の事実を知って絶句する若者を何人も私は見てきました。
ただ、この拉致問題はそれだけでは済まないものがあります。2004年に北朝鮮が拉致問題を認めるまで「拉致はなかった」と触れ回っていた人間たちがいました。それも政治家・学者といった日本のオピニオンリーダー達にです。
ある政党の党首まで務めた方は言われました。「北朝鮮が拉致などする筈はない」と。またある東大の教授の方は雑誌に拉致問題に関して論文を発表しました。曰く、「拉致をしたという確実な証拠が無い以上、拉致があったとは言えない。軽々しく騒ぎ立てるべきではない」と。
皆さんお分かりかと思います。少なくとも、この方たちは拉致された側、日本の側に立って物を全く考えていない。拉致をした方の側に立って物を考えているのです。
この国の国民の味方ではありません。このような方々がこの国の行く末に影響を及ぼしているわけです。何故でしょうか。
そして、もう一つ。この方々は拉致の事実が明らかになった後、誰一人拉致家族の下へ行き、「間違ったことを言って申し訳なかった」と言いませんでした。人として許せますか?
このような人間の残党がまだこの国にはいます。私達は怒りを持って糾弾し続けねばなりません。このような人間たちを、国民のために働かない者達を、国民の代表者たる政治家にしてはならない。私は心の底からそう思います。
拉致は国家による誘拐犯罪です。拉致をした方が絶対に悪い、それだけです。一刻も早く戻せ、それだけなのです。それなのに、解決までにかくも長い時間を要し、その周辺の歴史を語らねばならないところに、この国の拉致問題の特殊性・根の深さ・悪質さがあります。
「平和憲法」と拉致問題
改めて拉致問題について申します。
今からおよそ50年近く前から、突然行方不明になる日本国民の存在が度々報告されるようになりました。
最初、私達は何が起こったか分かりませんでした。まさか外国が、国家の主権を侵害し、同胞の人権を踏みにじっているなどと思ってもいませんした。
なぜならば私達は憲法によって平和国家になることを宣言し、他国へ決して危害を及ぼさないと誓っていたからです。そのような国を他の国々が危害を加えるはずがないと思いました。
ところが状況証拠も含め、どう考えてみても、他国それもごく近い国、朝鮮民主主義人民共和国が拉致を行っているとしか考えられなくなりました。
私たちにとってこれは大きな衝撃でした。
なぜなら、戦後私達は軍隊をこの国から無くしました。私達から攻撃しない限り、他の国は絶対に攻撃しないはずだったからです。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」しました。
ところが、その「公正と信義」を無視する出来事が起こってしまいました。平和精神を根本から裏切る行為が起こってしまいました。
そして、そのとき国にはもう直接拉致被害者を取り返すことが極めて難しい状況になっていました。何故ならば、日本は実力行使という手段を自らに禁じて放棄してしまったからです。
いつまた拉致されてもおかしくない
その結果、今現在、拉致の可能性を否定できないと警察が正式に発表している失踪者まで含めると実に900名近い日本国民が拉致の被害に遭っているという、信じられないような状況に私達はいるのです。
皆さん、拉致は他人事ではありませんし、過去の出来事でもありません。それは今もなお続く国民への脅威です。
北朝鮮は拉致の事実を認めました。しかし、国家としての謝罪は未だなく、拉致は止めたとは一言も言っていません。確かに直接拉致される危険性は以前より減ったかも知れません。しかし、それは私たち日本国民が声を上げたからであり、事なかれ主義でやり過ごそうとしていたらそれすら無かったかも知れません。
拉致問題の本質は人としての人権問題であり、国家としての主権問題です。このことに対して、政府が、そして国民が毅然とした態度を示しえない以上、形を変えて拉致問題は存在し続けます。
子供たちに拉致問題を教えない教師
ところが、その毅然としていなければならない国民がどのような状態に置かれようとしているか、皆さんご存知でしょうか?
拉致事件を啓発するために政府が作成したアニメ『めぐみ』というものがあります。政府は各地方自治体を通じて学校で上映するよう通達まで出しています。ところが、一部の自治体・教師の中にこのビデオを見せたくないという人間がいるのです。
なぜか?それは、「在日朝鮮人の方々へのいじめに繋がる恐れがあるから」だそうです。信じられますか?
本末転倒甚だしい。「拉致は一部の人間がやっていること、それとクラスメイトとの間には何の関係もない。いじめるなど論外」と教育するのが教師のやるべきことです。
アメリカはそういう教育をやっています。パールハーバーは必ず教えるが、それがアメリカにいる日本人の心を傷つけないような配慮のもとで授業が行われています。それは井口邦子議員のエッセイに詳しい。
結局自分の学校だけ、自分の教室だけ波風が立たなければそれで良いいんです。拉致など知ったことではないんです。
学校の「いじめ」と拉致問題
ごく最近、このようなこともありました。
長崎の高校です。いじめで自殺したことが濃厚であるにもかかわらず、親には自然死にして欲しいと迫った学校管理者がいました。
これは拉致ではありませんが、心は同じです。「波風を立てたくない、弱い立場の人間は泣き寝入りしろ」です。この学校の管理者に言います。あなた達は教育者ではない。今すぐ辞表を出して欲しい。
このような心がいじめや拉致に繋がっていることが、なぜわからないんでしょうか。
我慢しているからいじめられるんです。何もしないと高をくくられているからいじめられるんです。拉致問題に毅然とした態度を取れるようになればいじめがすべてなくなるとは言いませんが、今より減ることは間違いありません。
弱い側に立って物を考え、行動できるようになることは、いじめをなくす第一歩のはずですから。
身代金を要求する北朝鮮
最近では、北朝鮮は拉致された方々の存在を公にし始めました。それでも返そうとしません。挙句には、「いま日本と話しても得るものは何もない」とうそぶく始末です。
要は「返して欲しければ金をよこせ」なんです。
こんな状態が続いていることは、日本にとっても朝鮮にとっても、アジアそして世界にとってもこの上なく不名誉なことです。この21世紀の時代にあのような独裁者の存在を許した国として朝鮮は世界の歴史に記される。悲しいことです。
そして私たちは、そのような悪に屈し、媚びへつらった者として未来永劫世界の人間から笑われ続けられるわけです。ありえないと思いませんか。
アジアの不幸な民を救いたい
私たちはヘイトスピーチを行っているのではありません。ヘイトスピーチなど誇りある日本人の行うことではない。私たちは隣の国と本当の意味で仲良くしたい。共に手を携え、アジアの発展のために尽くしたい。不当なる他国の搾取から解放されたいんです。
私たちの先達が取り組んだのは、アジアの解放と発展の筈です。そのためには互いに含むところがあってはならない。
私たちは好きで北朝鮮へ経済制裁をかけているのではない。飢え苦しむ北朝鮮に住むアジアの同朋を見て笑っているのではないのです。
ただ一つ、「何の罪もない人間たちを政治の駆け引き道具に使うような真似をするな」と言っているだけです。
もしそれさえ止めてくれて、国交樹立がなされれば私の残りの人生、朝鮮の発展に捧げても良い。台湾でダムの建設に尽力した八田與一、インドでグリーンファーザーと言われた国土緑化事業の杉山龍丸。
日本には他国のため、アジアの発展のため己の人生ささげた人間がいくらでもいる。それも日本の伝統です。
国民が強くならなければ国家は強くなれない
改めて、私たちにできることはいったい何なのでしょうか?
拉致が国家間の交渉でしか解決しないことは、厳然たる事実です。
ですから、国家には強く毅然とした態度を持って対外交渉に赴かねばなりません。しかし皆さん、国家とは何でしょうか。何が国家を作っているのでしょうか。国家は国民の集合体です。強い国家は強い国民が作るのです。私たちは拉致問題に対しては強い気持ちを持ち続けなければならないのです。
然るに今の私たちの中には、「拉致問題など関わり合いたくない。面倒なことには関わりたくない」といった空気があります。まずこの空気を変えなければなりません。
強い国家は強い気持ちを持った国民がつくるとの信念のもと、小さな力をまとめ上げ大きな力に変えなければなりません。
そのために、まず私たちはこのような啓発活動を行っております。拉致問題のこと知ってください。拉致問題のことを思い出してください。
身近な人に伝えて欲しい
この国にいる人々が、新しい年度、新しい御代に向けて心が華やいでいるとき、家族をさらわれたままで、それも誰がさらったか分かっているのに、どうすることもできない拉致被害者の方々の悲しみを思い遣って下さい。
そして、このことを知り合いの方一人でもいい、お伝えいただきたいと思います。
そして、我々のこのような思いを形にするため私たちは署名活動を行っています。どうか一分だけで良い、悲しみ、苦しむ拉致被害者とその家族のためにお手を貸していただきたいと思います。頂いたご署名は、私共が責任を持って政府に届けます。
政治家の選び方
啓発活動・署名活動そしてさらにもう一つ私たちに出来ることがあります。
それは、選挙の応援です。地方統一選も近づきつつありますが、本当に国民の基本的人権と安全を守ってくれる方、国民の喜びを我が喜びとし、国民の悲しみを我が悲しみと出来るそのような方を選挙で選びましょう。
拉致問題に冷ややかな態度を取る人間を人間に一票を投ずべきではない。そういう人は人間としての根本に問題があります。
この国の一部の政治家の言葉を見るとき私は本当に心胆寒からしめるものを感じます。曰く、「日本がかつてあれだけのことをしたのだから、拉致問題が起こっても仕方がない」だそうです。
色々な政治問題がありますが、この拉致問題に関しては、私は右も左もないと思っています。人間としての基本的な人権問題だからです。ゆえに拉致に関してはチーム日本で取り組まなければならない。これに対して後ろ向きな態度を示す人間を私たちは絶対に当選させてはならない。私はそう思います。
では、代わりに当選させるべき方は誰か。例えば福岡市東区の市会議員・とみなが正博議員がいる。大野城市市会議員・井福だいすけ議員がいる。私たちの啓発集会にも度々参加されていらっしゃる。このような方々に当選していただきたい。私は心からそう思います。
拉致問題は地方議員のやることじゃないと言われる方もいる。そうじゃないんです。とみなが議員も井福議員も拉致問題は人として許せない、それだけなんです。この状況を憂えているそれだけなのです。
人が憂えると書いて優しいと読みます。拉致問題を憂うる、とみなが議員・井福議員は優しいんです。
もうご自身の選挙も近い。拉致問題の啓発集会に参加しなくても誰が責めるでしょうか。どうぞご自身の選挙活動に専念していただきたい。皆そう思っているはずです。それでもこの方々は来るんです。人として見過ごせないからなのです。
是非この方々を応援して下さい。このように心の優しい人間が、この国を良い方向に変えていくのです。
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後世の日本人に恥じない生き方を
本当に悲しいことですが、私達は今月もまた、署名を呼びかけています。
悲しく情けなくつらいことです。しかし、やらなければならないのです。そうしなければ、私たちは、この先もずっと人権の侵害と国家の侵略に怯えながら暮らさなければなりません。
そして後世、「この時代の日本人は自分さえよければ、あとはどうでも良いといった思想が蔓延し、苦しむ拉致被害者を見殺しにした」という汚名を着せられ、未来永劫軽蔑されるんです。
そのようなことがあってなりません。拉致に苦しむ方々が一秒でも早くこの祖国の地に戻れるよう、悲しみに沈むご家族の方々に心からの笑顔が戻るよう、私たちはこの活動に取り組んでいく所存です。
どうか皆様方の厚いご支援・ご支持を賜りますようお願い申し上げるとともに、これが私の拉致問題に関する最後のスピーチとなるよう祈りを込め、発言を終えさせて頂きます。
※この記事は、平成31年3月9日に福岡市で実施された街頭アピールの内容をもとにしたものです。
石原志乃武(いしはら・しのぶ)/昭和34年生、福岡在住。心育研究家。現在の知識偏重の教育に警鐘を鳴らし、心を育てる教育(心育)の確立を目指す。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会幹事。
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